ドライストーンウォーリングの施工はお任せください(資格を英国で取得)

米山庭苑の代表、米山拓未が2019年に、イギリスのコッツウォルズに武者修行の旅に出掛けました。目標は、ドライストーンウォーリングというイギリスの伝統石積み工法で、Level.2の資格を取得すること。2021年3月現在、日本では14名しか取得できていない難関の資格ですが、必ずや日本の新しい住宅設計とマッチすると確信し、渡英しました。現地では、無事に技術を習得し、資格を取得。日本の庭師として学んできたことを軸足に、さらに技術の幅を広げ、庭づくりに取り組んでいきます。

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ドライストーンウォーリングでつくられた石垣。天端に苔が乗ると雰囲気がぐっと柔らかくなる/イギリス・コッツウォルズにて

初めて見た時にピンときた。この石積みは日本の現代住宅とマッチする。

日本の庭師として、ずっと石積みにはこだわり続けてきました。草、木、土、石、水など、自然から力をもらって、庭にまとめることが、私たちの仕事。中でも、最も硬く重たい石は、敷地の造成などの外構はもちろん、築山の三尊石から、土塀の基礎となる腰積みにいたるまで、あらゆるところで使うため庭師の必須項目といえる素材です。

これまで、日本の家は瓦葺きで軒があり、表情豊かな土や漆喰の壁などが使われていました。縦横以外曲線が多いことが大きな特徴のひとつで、だからこそ石積みや延段(アプローチ)も縦横のラインが出ない施工方法が培われてきたのです。

しかし、昨今のハウスメーカーの家を見ると、そのような伝統的な日本の家にあった曲線は少なくなり、より縦横の線がはっきりと出ています。中には旭化成さんのヘーベルハウスのようにキューブ型の住宅すらあります。こうなると、むしろ縦横のラインがくっきりと見える石積みこそ、いまの日本の家に合うのではないかと考えていました。

(左)日本の石積み技術を使った花壇。縦横の目地が通らないことが特徴/米山庭苑施工
(右)コッツウォルズで見た石垣。細長い石を積んでいくため、横のラインが強調される/イギリスにて撮影

世界に目を向けると、さまざまな石の文化があります。ペルーのマチュピチュやメキシコの巨石文化もすごいと思いますが、中でもヨーロッパは別格ではないでしょうか。地震がほとんどないため、いまも石でつくられた建物を大切に使って暮らしています。つまり、石が過去の象徴ではなく、現代の暮らしそのもの。ギリシャやイタリアに目を向けると、それこそ二千年以上も、石と暮らしが密接に関わってきたことを、いたるところで見ることができます。

いろいろ調べていく中で、私の目に留まったのが、イギリスの石文化です。石でできた家は何よりも素朴で、家の中の資料を見ると、壁やバーカウンターまで石でできているものもありました。

コッツウォルズの街並み。家も道もすべてが石で構成されているところも。石を使う文化が成熟している。

外を見ると、牧場にずっと伸びる石積みの囲い。どこか私たちの木や竹、土の使い方に通じるところもあります。しかも、モルタルなどを使わずに自然素材だけでつくられています。日本の石積み工法の空積みと同じく、壊れたら補修できるし、何よりもサスティナブル。伝統工法こそが、最大のエコという時代性にも合致していました。

お互いに島国だからでしょうか。文化を独自で育み、素朴な味わいに仕上がっているこのイギリスの石積みの技術を学びたいと思うようになっていきました。

コッツウォルズのレストランにて。壁だけでなくカウンターにも石積みを取り入れている。

調べてみると、この平らな石を横に置き、縦のラインを出さずに積んでいく技術は、「ドライストーンウォーリング」というもので、なんと資格制度まであるとのこと。私も若い頃は、「職人は紙切れ(資格証)で語るものじゃない。腕を見せてナンボだ」と言い続けてきた側の人間ですが、いまはさまざまなことを経験し、庭師を取り巻く環境も大きく変化したため、資格制度は大切なことだと考えています。

話は変わりますが、日本には庭に関わる単独技術の資格はほとんどありません。造園技能士など、トータルでの庭づくりの資格はあるものの、得意種目で資格を取ることができないのです。例えば、日本の城や寺社仏閣の石積みを手掛けてきた穴太衆の穴太積に資格があればぜひ挑戦したいのですが、このあたりが日本らしさでもあり、むずがゆさでもあります。

正直、庭ひとすじで歩んできたため、英語力はあやしいものでした。でも、熱意だけで2019年に渡英し、このドライストーンウォーリングの資格取得に挑戦することにしたのです。

同じ志を持つ仲間たちと出会い、必ず技術習得しようと誓った。

2019年秋、私は英国の石積みの本場、コッツウォルズにいました。DSWA(ドライ・ストーン・ウォーリング協会)の資格取得試験の会場です。周囲には同じ志を持つ日本人もいました。それぞれが、この資格を取ることで、もっと庭に関わる人間としてひとつ上のステージに行きたいという人たちでした。

そんな彼らと鎬を削ったのは、現地の牧場です。「ここに、ドライストーンでウォール(壁)をつくれ」という、そのままの試験内容ですが、もちろん牧場ですから羊もいます。石を積んでいたら羊の大群が通って一時作業中止になったり、手元を見ずに石を取ろうとしたら、羊のう○こだったりした人もいます(笑)

(左)資格試験で石積みを行う米山庭苑の米山拓未
(右)ドライストーンウォーリングのテスト会場周辺の景色

正直、当初の私はこのドライストーンウォーリングを、技術的な観点でちょっとナメていたところがあります。ひとつの理由は、日本の庭こそが素晴らしいと信じ、日本人が培ってきた石積みは世界No.1だと思っていたからです。また、あんなにも不定形の石を、30年弱もの間、積み続けてきたという自負もありました。

「平べったい石を並べるだけなら、不定形の石を積むよりも簡単だろう」、「あんな女性や老人でも抱えられそうな石で実際に強度は足りるのだろうか」。これらの考えは、現地で完全KOされてしまいました。

私は日本人の中では身長が高い方ですが、ドライストーンウォーリングでつくられた階段を登ってもビクともしません。羊や牛が逃げない囲いに使われるため、強度はかなりあります。また、竹垣の四ツ目垣もそうですが、単純に見えるものほど奥深い。手頃な大きさの石だけでつくれるということは、それこそ女性や老人でも技術があればいつでも作り、補修できるのです。ずっと石で文化を育んできた実力をまざまざと見せつけられました。

試験も終盤に差し掛かると、「これで合格できるだろうか」と考えるのが人の心です。私も、石を積みながら、チラチラと試験官の方を見ていました。投げかけられていたのは厳しい目。「ひょっとすると、ここまで来たのに受からないのだろうか」、そんな考えが頭をよぎりましたが、全力で石を積むことにしました。結果は、合格。仲間達とも、帰国してからの話に花が咲いたことを覚えています。

ドライストーンウォーリングの技術を使って庭をつくろうと仲間達と誓って帰国しました。

ドライストーンウォーリングの技をお施主様のために使う。

思わず熱い思いのたけを書いてしまい、長くなってしまいましたが、なぜドライストーンウォーリングの技術を身に付け、資格を取ったのか。それは、お施主様が心から喜ぶ庭をつくりたいからに他なりません。

米山庭苑では、まずはお施主様のご希望を丁寧にヒアリングし、そこから持てる知識やアイデア、技術を総動員して庭をプランニングしています。これまで、基本となっていたのは、先人たちが積み重ねてくれた日本の庭の技術でした。しかし、世の中はどんどん多様化し、進化しています。「もし、日本の庭の知恵を持つ私が、まったく別の世界の(しかも、世の中でどんどん取り入れられてきたヨーロッパの)技術を持つことができたら」。おそらく、1+1以上の相乗効果が現れるのではないか。そう、心の冒険をして、行動も起こしていまがあります。

ぜひ、米山拓未の今のすべてを、あなたの庭にぶつけさせてください。人がいて、技術が紡がれていく。その本流にいることを、これからも誓います。

ドライストーンウォーリングの石の加工シーン

庭づくり・管理、大小に関わらずお気軽に

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